低Ag化するはんだ合金

はんだの鉛フリー化が進む中、長くSAC305(Sn, Ag3.0%, Cu0.5%)の合金組成がその主流を成してきましたが、近年投機の対象になった主成分のAgの価格変動リスクを回避するため、Ag含有量を減らしたはんだ合金組成の要求が高まっています。
ここでは、低Ag化のメリットと、デメリットの改質方法、および改質元素とメカニズムについて紹介します。

低Ag化のメリット

金属価格の高騰は、鉛フリーはんだの価格に大きく影響を及ぼします。特に従来のSAC305組成では、材料価格の5割近くをAgが占めるため、アッセンブリコストを圧迫する主因となっています。
SAC系の組成では、Ag含有量を減らすことによるコストダウンが可能です。
グラフはSAC305と弊社ラインナップの低Ag合金組成の例ですが、Ag含有量を3.0%から0.1%にすることで、約40%のコストダウンを実現できます。

低Ag化のデメリットと改質方法(析出・固溶によるハイブリッド強化)

Agは、Sn結晶粒の周囲にSn/Ag共晶組織のネットワークを形成することで、応力によってSn結晶粒内に発生したSn原子の転位と粒界を超える転位の伝播を抑制し、接合部の耐熱疲労性および機械的強度を保持しています。
SAC(Sn-Ag-Cu)系で適正な耐熱疲労性および機械的強度を得るために必要なAg含有量は3%前後で、それ以下のAg含有量では機械的強度が低下し、融点(溶融完了温度)の上昇等のデメリットが顕在化します。
これらのデメリットの改質には、減量したAgを補完する元素の添加が有効です。
弊社では、材料原価として安価なBi(ビスマス)とNi(ニッケル)によって、主成分のSnの結晶粒の粗大化抑制と機械的強度向上、更に融点(溶融開始温度)の降下を達成しました。

改質元素

メリット デメリット
析出元素 Ag 融点が降下する(Sn/Ag/Cu共晶:217℃)
機械的な特性や接合強度が向上する
濡れ性が向上する
材料のコストが高い
経時的な熱疲労によって、金属間化合物(Ag3Sn)が粗大化し、接合耐久性が低下する
Cu 材料のコストが低い 経時的な熱疲労によって、金属間化合物(Cu6Sn5)が粗大化し、接合耐久性が低下する
Co
Ni
Snの結晶粒界にSn-Cu-(Co,Ni)金属間化合物として微細析出し、接合耐久性が向上する
SUS及びFe等への耐食性が向上する
過剰な添加量で融点が上昇し、濡れ性が低下する
固溶元素 Bi 添加量の増加に従って融点が降下する
接合強度が向上する
表面張力が低下し、濡れ性が向上する
Pbと低融点相を形成する(Sn/Pb/Bi共晶:98℃)
添加量の増加で、インパクト衝撃耐性が低下する
In 添加量の増加に従って融点が降下する 材料のコストが高い
溶融時に酸化しやすい(溶融性の低下)
Sb 接合強度が向上する 添加量の増加に従って融点が上昇する

析出強化のメカニズム

析出元素であるNiを微量添加し、析出強化を行います。
Sn結晶粒内に発生したSn原子の転位は、進行と堆積によって塑性変形に至りますが、転位は近接した結晶方位の異なるSn結晶には伝播しにくい挙動があります。
Sn-Cu-Ni系の金属間化合物は凝固時に優先的に微細析出しSn結晶粒界を増加させるので、塑性変形に至る時間を延長させ、接合部の耐久性を向上させます。
Niは材料金属として安価であり、低Ag組成で有効な改質方法です。

固溶強化のメカニズム

Snよりも原子サイズの大きいBiを混合分散させて、固溶強化を行います。
Sn結晶内の原子配列には空孔等の格子欠陥が多く、応力によって容易にSn原子の転位が発生します。
転位は格子欠陥を起点として発生しますが、Snと異なる原子サイズの元素が配列中の一部のSn原子と置換または空孔に侵入することで、規則性をもった原子配列を歪ませ、Sn原子の転位を抑止することができます。
置換または侵入する原子は、Snをはじめとする合金の構成元素と金属間化合物を生成しない性質が不可欠で、鉛フリーはんだではSnに固溶するBi(ビスマス)、Sb(アンチモン)、In(インジウム)、Zn(亜鉛)が検討できますが、融点・金属価格・接合部の電気的特性を考慮するとBiが最も有効な元素になります。

弘輝低Agラインナップのご紹介

S1XBIG58-M500-4
Ag含有量1.1%。融点211-223℃、ROL0・ハロゲンフリータイプの低Ag合金ソルダペースト。
SAC305相当の接合耐久性、高温・低温環境への対応が要求される製品向け。

S01XBIG58-M500-4
Ag含有量0.1%。融点211-227℃、ROL0・ハロゲンフリータイプの低Ag合金ソルダペースト。
よりコストダウン志向の製品向け。

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