ハロゲンフリー高濡れソルダペーストの開発


はんだ材料のハロゲンフリー化の動き

電子業界において、環境負荷低減の観点からハロゲンフリー(HF)化が求められている。電子業界におけるハロゲン化合物は、古くよりプリント配線板の難燃剤を中心として使用されたが、廃棄・燃焼の際に環境負荷物質であるダイオキシン類を発生させるという問題があった。そこで、2007年のIPC/JEDECの塩素・臭素化合物の基板中の規制を皮切りとして、業界全体としてのHF化が加速して行くこととなった。はんだ材料という点では、電子情報技術産業協会(JEDEC)が2010年にHFはんだ材料規格「ET-7304A」をリリースする他に、米国電子回路協会(IPC)についてもはんだ用フラックスの要求事項「J-STD-004B」に改訂するなど、世界的にもHF化の流れが拡大している(図.1)。

図1.各種ハロゲンフリー規格

図1.各種ハロゲンフリー規格



一方で、ソルダペースト用フラックスには、旧来よりハロゲン化合物が広く使われている。 フラックスの主な作用としては、部品及び基板をはんだと接合する時の各表面の金属酸化物の除去(還元作用)能力が挙げられる。はんだ接合時のフラックスの作用について模式図を次に示す(図.2)。

図2.フラックスの金属表面への清浄化作用

図2.フラックスの金属表面への清浄化作用


図中においてハロゲンは、
①金属酸化物と反応し、金属-ハロゲン塩を形成。
②金属-ハロゲン塩が有機酸と反応し、ハロゲンを遊離。
③遊離したハロゲンが再び金属酸化物と反応。
というように触媒的に作用して金属酸化物の還元に寄与していることがわかる。
また、幅広い温度域で還元作用を示すという点もハロゲンの特徴である(図.3)。

図3.ハロゲン含有従来品/HF従来の材料活性温度


このようにフラックスにおいてハロゲンは少量で効果的に作用する活性剤であるといえる。 HFフラックスでは上述のハロゲンによる寄与が無いため、当然還元作用は弱くなる。そのため、 濡れ不良を中心とした実装特性不良(はんだ未溶融、部品未接合、はんだボール、ディウェッティング) といった症状を引き起こしやすいといった課題があった。そのため、ハロゲン入りの従来製品と同等の実装特性を有するためには、 これら活性剤を多量に添加する必要があるが、活性成分過多による作業時の安定性低下(増粘による印刷不良)、信頼性の低下を引き起こす懸念があった。


ハロゲンフリー高濡れソルダペーストの設計と新製品S3X58-M555について

HF化による濡れ不良という課題に対し、前述の材料による活性温度の点からHF高濡れ化を検討した。 HF化によって必要なフラックス特性としてはとりわけハロゲンが機能していた高温度域での活性であるとともに、 ソルダペーストとしての安定性を確保したものでなければならない。 そこで、当社ではHF化における高濡れ化/安定化を両立するために図.4のような活性剤の安定化技術に取り組んだ。 フラックスAを使用した場合、溶融性は乏しく、安定性も悪い。 これは常温等低温域ではんだ-フラックス間の反応が起こっているためであり、 そこではんだ溶融時に必要な活性力が消費されているためである。 対して活性剤Aに対し安定化処理を施したフラックスA+では温度に対して選択的に反応していることが分かる。 これによりはんだとの温度による反応を制御、ソルダペーストの熱的・経時的な安定性を確保するとともに、 はんだ溶融時の十分な活性力を維持し、高濡れ化を実現した。


図4.安定化処理によるフラックスの反応性向上

図4.安定化処理によるフラックスの反応性向上


安定化評価の実施例として、30℃保管時の粘度挙動の測定結果を図.5に示す。 従来HF品は30℃付近での反応が進みやすく、ソルダペーストの増粘といった不安定な挙動がみられる事があった。 S3X58-M555では安定化技術の採用により、常温保管および使用時例えば、ソルダペースト保管時や印刷時といった常温以下の温度では、 はんだ粉とフラックス中活性剤の反応性は低く、安定化されている。


図5.30℃保管における経時粘度測定結果

図5.30℃保管における経時粘度測定結果


次に溶融性評価の実施例について下記紹介する。

・耐熱性
実装面積の小型化・高集積化に伴い、BGA等のパッケージ部品が主流となってきた反面、枕不良といった外観検査だけでは確認できない不良が発生するようになった。
図.6は劣化評価として、マスク厚:60μmで印刷、180℃で予備乾燥を行った供試材に対し、BGA(SAC305ボール)を装着・加熱溶融させた結果になる。 従来HF品ではフラックス耐熱性の低下からはんだ溶融時にBGAボール上の酸化被膜を十分に取りうるだけの活性力を持たず、枕不良(未接合)が発生する可能性があった。

図7.劣化条件におけるBGA接合評価

図6.劣化条件におけるBGA接合評価



S3X58-M555では、安定化技術の他フラックス活性力を幅広い温度域で維持できるように、 活性成分の最適化をおこなった。(図.7) フラックス耐熱性向上に伴い、同条件化でもBGAボールと相溶し、枕不良を抑制していることがわかる。

図7.活性成分の効率的な添加による溶融性向上

図7.活性成分の効率的な添加による溶融性向上


・母材濡れ性
図.8は各種熱処理した金属試験片に対し、ソルダペーストを印刷・リフローした時の試験結果になる。 従来HF品ではハロゲン等活性成分の欠如により、金属母材上の酸化膜除去を行うための十分な活性力を発揮できず、 結果酸化物が印刷面上に残存することから不濡れ(ディウェッティング)が生じやすかった。 S3X58-M555ではハロゲンに代わる新規活性成分を適用しており、HF規格品でありながらも効果的に酸化物を除去することで、 高い母材溶融性を有している。粗悪状態の部品・基板に対しても良好なはんだ濡れ性を期待できる。


図8.劣化金属母材への濡れ性試験

図8.劣化金属母材への濡れ性試験


電子業界における環境負荷低減の取組みは、今後も推進されていくものと考える。 当社ははんだ付け材料のリーディングカンパニーとして、 お客様が真にご満足いただける製品を提供するべく、今後も邁進していく。



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