濡れと活性力について


高い濡れ性を発揮するソルダペーストの開発

近年製品価格競争の激化により基板に使用される電子材料のコストダウン化が進みつつある。同時に進む基板・部品のコストダウン化の影響により、部材によってはメッキ処理やメッキ後の保管状態が望ましくなく、粗悪品が出回ることがある。表面に強固な酸化膜を形成しているため接合不良が発生するケースが有り、これらの粗悪品に対して濡れ性の高いソルダペーストが求められている。本稿では様々な劣化部材に対して優れた濡れ性を発揮するS3X58-M500C-5について、濡れ性の発現機構を踏まえて紹介する。


高濡れ低ボイドソルダペーストの設計

活性剤成分は低温領域から活性力を発動するものから高温領域で作用するものまで様々ある。低温領域では予備加熱での金属表面近傍の酸化膜を除去する効果がある。高温領域でははんだ溶融時の酸化膜除去や再酸化の抑制効果として機能することで濡れ性への影響が大きい。従来処方では図.1の様に活性剤の作用領域が重複しており、はんだ溶融時に十分な活性力を発揮することができなかった。そこでS3X58-M500C-5では低温から高温領域まで効果的に活性剤を配置し最適化することで少量でも十分な濡れ性が得られる様設計した。


図1.活性剤成分の最適化

図1.活性剤成分の最適化


また、独自の添加技術により活性剤成分を常温では不活性化させ、加熱することで活性力を発現させることに成功した。(「ハロゲンフリー高濡れソルダペーストの開発」の項を参照)これによりJ-STD-004規格においてROL0水準を満たしながらもソルダペースト保管時の安定性や絶縁信頼性と高い濡れ性を両立した性能を発揮できる様になった。加熱により活性剤が劣化していくと従来品の様に活性力が低下し濡れ不良が発生しやすくなる。(図.2) M500C-5では低温から高温領域まで活性力をカバーしているため予熱の段階から酸化膜を除去し本加熱で十分に濡れ性を発揮することができる。また活性剤成分を低温域で不活性化したことにより、常温でのはんだ粉との反応やプリヒートでの活性剤の劣化を抑制した結果、持続性が飛躍的に向上した。

図2.フラックスの金属表面への清浄化作用

図2.フラックスの金属表面への清浄化作用


酸化膜の成長と濡れ性への影響

<劣化金属板への濡れ広がり性評価>
酸化膜の成長と濡れ性への影響について下記条件で試験を実施した。銅、ニッケル、真鍮板及びスズメッキ基板をそれぞれ150℃のオーブンで4,16時間処理を行った基板に対し6.5mm径、200μmのマスク厚でソルダペーストを印刷し加熱溶融させた。S3X58-M500C-5では16時間まで劣化処理を行ってもすべての金属板に対し良好な濡れ広がりを示した。一方従来品では4時間劣化処理を行った真鍮板でディウェッティングが発生し、16時間以降からすべての金属板で濡れ不良が発生した。劣化処理時間を長くすることにより金属酸化膜が成長しディウェティングが発生しやすくなったと言える。以上の結果から、基板・部品のメッキ不良や劣悪な保管状況により濡れ性へ悪影響を及ぼすことが推測されるが、そのような粗悪品に対しても高い活性力を有していれば濡れ不良は発生しづらいと言える。


図3.劣化処理時間によるディウェッティング評価

図3.劣化処理時間によるディウェッティング評価


<変位検出ぬれ性試験機による劣化銅板への濡れ広がり性評価>
劣化銅板(150℃x16時間処理)に対して変位検出ぬれ性試験機SMT-tester(山陽精工(株)社製)を用いて濡れ広がり性を評価した。ペーストを印刷した銅板上に銅板を重ねて挟み込み、はんだが濡れ広がることで銅板が沈み込み、高さ方向の変位量を検知・記録するものである(JIS Z 3284-4変位検出ぬれ試験準拠)。従来品は濡れ広がり性に劣り加熱を継続しても変位量に変化がないのに対し、M500C-5では高い濡れ性を示し2分以上加熱しても濡れ広がり続けていく様子が観察された。このことから加熱を継続しても活性力が失活せずに効果を発揮し続けていると言える。


図4.劣化銅板に対する濡れ広がり性の評価

図4.劣化銅板に対する濡れ広がり性の評価


金属母材及びリード部品への濡れ性

上記で示した金属母材以外に各種ニッケル系及び銅系金属母材に対する溶融性も従来品より飛躍的に向上した。(図.5)またCSPや0603チップサイズ抵抗器に対する溶融性に優れ、通常のソルダペーストでは濡れ上がりが困難であるNi系メッキ部品に対して著しい特性を発揮している。(図.6)


図5.各種金属母材に対するディウェッティング試験

図5.各種金属母材に対するディウェッティング試験

図5.各種金属母材に対するディウェッティング試験


図6.各種金属母材に対するディウェッティング試験

図6.微細溶融性とNiPdメッキQFP、Ni金属板への濡れ上がり


活性剤の持続性とボイドへの影響

活性力とその持続性は濡れ性のみならずボイド特性にも影響を及ぼす。はんだは酸化されることにより流動性が低下しQFNやPwtr等の大型部品下のボイドが増加しやすい傾向にある。溶融時間を短縮リフロープロファイル(PH1)と溶融時間を極端に延長したPH2、予備加熱時間を短縮したPH3の条件で加熱し、X線加熱観察装置を用いてボイドの発生挙動を観察した(Fig.7)。一般的に予備加熱では溶剤の揮発が生じ、本加熱では溶剤の揮発の他に活性剤成分の分解ガス、金属酸化膜除去による還元水ガスが発生する。従来品では予備加熱時間を十分にとることで溶剤を揮発させ、本加熱で発生するガスを十分に排出させたPH2においてボイドはある程度低減したが、PH1,3では大型のボイドが残留した。一方M500C-5では優れた流動性を示し粗大化する前にボイドを排出している様子が観察された。はんだの酸化を抑制し、リフロー時間を延長しても流動性を継続し発生ガスを排出し続けることで、いずれのリフロープロファイルにおいても低ボイドを実現している。


図7.リフロープロファイルによるQFNのボイド特性

図7.リフロープロファイルによるQFNのボイド特性


まとめ

  1. 劣化処理条件を悪化させることにより金属酸化膜が成長し濡れ不良が発生しやすくなる。
  2. そのような金属酸化膜を除去するためには高い活性力と持続力が必要である。
  3. 各温度領域に有効な活性剤成分を配置すること、活性剤成分の安定化技術により、はんだ溶融時に十分な活性力を発揮することで高い濡れ性を示すことができた。
  4. 濡れ性の持続化により流動性を維持することでボイドが排出されやすくなる。

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