低銀系やに入りはんだの動向と課題

Sn/Pb共晶はんだに替わるPbフリーはんだとして、JEITAが中心となってSn3.0Ag0.5Cuを推奨したことにより、やに入りはんだでも多くのユーザーがこの組成を指定している。

しかし、その後の経済環境の変化とSn3.0Ag0.5Cuの実用化が進んだことで、実機での問題点が顕在化してきた。現在は大きな課題が2点あり、一つ目は銀やすずの地金相場の高騰によるはんだ材料費の負担増で、コスト低減のために低銀系への要求が大きくなったことである。二つ目は、母材を溶解しやすいPbフリーはんだの特徴が引き起こす銅細線の消失や、コテ先の鉄メッキの短期間での消耗(図1)などで、何らかの対応が必要になっている。

ここでは最近の低銀系やに入りはんだの動向と、その課題に対するはんだメーカーの対応について述べる。

Coを微量添加した低銀系やに入りはんだの特徴

1. 濡れ性

当社の製品であるCoを微量添加したやに入りはんだ「S03X7Ca-56M」は、Sn0.3Ag0.7Cuに0.03%のCoとCoの機能を補完する微量の一元素を添加したはんだで、Sn0.3Ag0.7Cu0.03Co+αと表記されるものである。濡れの指標の一つである表面張力は、Coを添加することで低下することが報告されているが、当社で測定した結果も同様に低下が認められた。また、銅板上で測定した拡がり率も、同じフラックスを用いたSn3.0Ag0.5Cuとでは遜色ないものである。(表1)更に、低銀はんだの濡れ時間も使用温領域では差がないため、同製品はSn3.0Ag0.5Cuと同様のはんだ付けが可能であるといえる。

  表面張力(dyn/cm)
(液滴法、255℃)
拡がり率(%)
(銅板 340℃)
S03X7Ca-56M 410 85
Sn3.0Ag0.5Cu 450 15
Sn40Pb 390 91

表1 S03X7Ca-56Mの表面張力と拡がり率

2. 母材の溶解特性

Coを添加したはんだの鉄の溶解抑制能力を評価するため、450℃のはんだ中で鉄板を入れて1時間攪拌した場合の、鉄のはんだ中への溶出量はすず鉛はんだ(Sn/40Pb)に近かった。
このため、はんだ付けロボットを使用し、コテ先温度390℃で2万ショットのはんだ付けを行った。試験後のコテ先の断面を図2に示すが、鉄メッキの消耗量はすず鉛はんだと同程度であった。このようにCoを添加したはんだの優れた鉄溶出抑制のメカニズムは図3の鉄とはんだの複合マッピング像に示したように、界面にSnFe-SnFeCo-SnCoのバリア層を形成するためと推定している。

図2 2万ショット後のコテ先断面

3. 信頼性

Coを添加したはんだは銅との界面に生成するCu6Sn5の金属間化合物のCuと一部置換して(Cu、Co)6Sn5と表現される化合物を形成する。この金属化合物相は比較的暑く均一で、時効による化合物の成長が抑制されるのが特徴である。また、EPMA(X線マクロアナライザ)による元素分布調査の結果では、Coは微細なSnCoとして分散されていることを示唆している。このように、Co界面の金属間相の強化とはんだ中への分散強化を同時に行うことで、信頼性を確保している。

図3 鉄-はんだ界面の複合マッピング像

今後の低銀系鉛フリーやに入りはんだの動向

やに入りはんだでは、低銀系でもSn3.0Ag0.5Cuと同レベルの濡れ性が確保できるため、信頼性の確保と金属溶解の抑制が課題となる。そのための改善は続けられているが、評価はまだ未知数の部分が多い。しかし、今後の改善と評価を継続して多くのデータが蓄積されることで、低銀ですず鉛はんだに近い使い勝手と、Sn3.0Ag0.5Cu並みの信頼性という究極の目標に一歩近付いた製品が出現することが期待できる。また、その達成できる信頼性のレベルにより、今後どの程度の低銀やに入りはんだがSn3.0Ag0.5Cuに代替されていくかが決まると思います。

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